タイムトラベルの電話

 今月はハッキリ言って暇な月、こんな時は普段なかなか出来ない事やら資料整理などで家に居る時間が多い。自宅に僕の個人の部屋というものはなく廊下と言うか通路、台所の横と言うか人工大理石でできたテーブルにコンピューター、コピー機、オーデイオ、電話などすべて手の届くところにある場所、そこで仕事をしている。夕方、バックステージの原稿のテーマをテレビをBGMにしながら考えていた。そんな時電話がかかってきた。中年女性の声で「松崎君?私、覚えている?」と言って名前を知らせてきた。もしや昔のガールフレンド?不倫相手?(そんな事はありません)はっきり言って誰なのか見当もつかなかった。最近は年齢のせいか、忘れやすいし覚えにくいようになった。ましてクンで呼ばれる事は殆どなく親しい友人は松ちゃんとか松崎と呼び捨て、不思議に感じて何度もどなたですか?と聞いてみた。そしてやっとわかった。なんと小学校の同級生からであった。本当のところ名前も顔も全然思い出せない。でも彼女は昔話を矢継ぎばやにしてくる。僕は「ごめんね、今思い出そうとしているんだが…ちょっと待ってね」を繰り返し、話のハシハシから何とか記憶をたどろうと必死であった。すぐ理解しようにもなにせ40年前の事でその間に一度も会ったことはなく、それも同じ町内でなく隣の学区だったので焦りが増していった。でも彼女は大昔の出来事を昨日の事のように覚えているらしい。小学一年生の時、僕が彼女のランドセルをこともあろうに僕のうちまでかってに持って帰ったので、母親と一緒に家に怒鳴り込んで行った事や、スカートめくり、水泳部の事、毎日ケンカばかりのガキ大将で先生に廊下に立たされていたことなど恥かしいほどの話を昨日のことの様に話はじめていた。そんな事があったのだろうか?そんなに悪ガキだったかな〜と感じながらも不思議に心はその当時(40年前)へとむかっていた。少しずつではあるが思い出しそうになっていた。「ああ!そうそう。いたいたそんな奴。先生は元気にしてる?など、やっと話が進むようになるのに10分が過ぎていた。結局用件は単純、小学校の同級会の手伝いをして欲しい。又、参加できるかの確認であった。あいにくスケジュールの関係で参加は出来そうにもないが、少しでも覚えている仲間がいれば会ってみたい気がした。先生はお変わりないだろうか?期待と不安。恥ずかしいくらい子供だった頃…。子育てでも落ちつき時間的にも余裕が出始めた我々の年代、きっと誰もが同じ事を感じているんだろう。ひょっとしてもうオジイチャン、オバアチャンになっている同級生もいるのでは…。そしたら後は老後を如何に生きるのか?「老後」 その響きはいやだな〜と感じながらも近い将来誰しも迎えるのは間違えはない。僕は何をしてても気分は30才代と思ってはいるのだが、目、肩、腰、薬にたよっても体力の衰えを隠すことは出来ないみたい。ドラえもんの「4次元ポケット」があったらな〜。早速、卒業アルバムを探すことにした。