マイケル・ウォー

 数日前のラジオで、日本からの観光客の到着人数が約4100人とニュースで流れていた。僕がここハワイで、長期滞在を決めた1988年以降は1日に10000人近くに達して、その数はバブル崩壊まで続いた。当時はここがハワイ?と、言いたくなるほど日本人観光客で賑わっていた。ワイキキやアラモアナの有名ブランドのお店には、長蛇の列が続いて入場制限までしていたし、ゴルフ場や日本食レストランの予約をするのも数日前が当たり前、本当に凄かった。まさにバブル時代を象徴していたような光景だった。さて、一年振りにハワイに戻った僕は、つい、そんな昔の事を思い出していた。先日、ワイキキ、アラモアナ、カハラモールへ出掛けてみたが、日本人の観光客の姿は確かに減少していると感じた。観光収入が主体であるハワイ、さぞかし大変な事だろうが、僕にとっては、お正月が過ぎたこの時期が休暇を過ごすには最適かもしれないと感じた。この所の天候は暑くもなく、寒くもないし、のんびりムードに浸れる。のんびりムード…?でも、僕の休暇は少し違っているかもしれない。

 よく、ハワイで毎日何をしているの?飽きないの?なんて言う質問を受ける。4泊6日のホテル滞在なら、あっという間に時間は過ぎて行くだろう。だから、長期滞在型の僕への疑問は当然かもしれない。確かに「家」が無かったら飽きてしまうかな?それと「友達」がいなかったら?やっぱり飽きてしまうかもしれない。でも、僕には、ここハワイに「その両方」を持っている。だから刺激があるハワイと感じる。親友と呼べる友はそんなに多くいる訳がないが、二人の親友がハワイで暮らしている。その一人は子供達が幼かった頃に家庭教師をしてくれていた日系3世のアイリーン・カミムラと言う日本語ペラペラの女性だ。元々教師だが、今では教師を教育すると言う立場にあって忙しい様子、でも、時間を割いて我が家の管理もしてもらっている。又、日常の生活で生じる出来事のすべてを安心して相談出来るし、子供達の教育に関する問題などに良きアドバイスをしてくれる有り難い存在である。

Ms.Irene Kamimura


 そしてもう一人は、中国系アメリカ人、日本語がぜんぜん話せないマイケル・ウォーと言う男だ。彼との最初の出会いは隣同士だった事、つまり、以前に僕が居たコンドミニアムの隣の部屋に住んで居た事だ。ワンフロアー3軒だけの家族的なコンドだったせいもあって、行ったり来りのお付き合いが始まった。彼とは娘や息子の様に流暢に会話が弾むわけでもないが、お互いに理解しようという気持ちでこれまでに至っている。そして、彼こそが僕のハワイ休暇を演出してくれている男だと考えている。マイケルの職業はファニチャーショップ「CS&WO」の副社長、父親が設立した会社を現在、5人の兄弟で経営している。ここハワイで「CS&WO」と言えば誰もが知っている有名ショップで、家具だけではなく、絵画など多くのインテリアに関する商品も販売している。勿論、歴史もあり、父上は大富豪でも有名である。一族全員が気取らない人柄なので、僕達家族とは十数年来の付き合いが続いている。御存知の様に中国系の人達はとても結束力強い。兄弟、親戚は元より、一旦、友人として受け入れると皆がファミリーとして接してくれる。だから、交際範囲が自然と広がっていくものである。僕達家族も日本からの友人として大切に迎えてくれて、事あるごとに色々な人達に紹介してくれるし、普通では参加できない場所などへも誘ってくれる。数年前もそうだった。マイケルから大きなパーテイーへの誘いのTELが入った。それはチャリテイー団体主催のオークション・パーテイーだった。参加者はタキシード着用が義務ずけられていた。ハワイでタキシードパーテイー?ハワイはアロハシャツが正装だろう?僕は、「らしくないなぁ〜?」と、感じながらも致し方なく、タキシードを購入するハメになってしまった。パーテイー当日、会場となったワイキキのホテルへ行ってみた。その瞬間、僕はその光景に圧倒された。1000名以上は居ただろう…、いや、もっとかもしれないが、驚いたのは人数ではなく、大半が白人(現地語でハウリ)だった事である。もちろん夫人同伴で全員がドレスアップしていた。まるで映画のワンシーン、失礼ながら、こんなパーテイーがハワイで行われていたとは夢にも思わなかった。まったく、驚くべき出来事だった。僕は自称ハワイ通、でも、知ってたのはウワベだけで、ハワイを軽く見ていた気がした。昼間に見かける地元の人達の服装は、ゴム草履にTシャツに短パンがほとんど、それにしてもあの時の大勢の白人?彼らは一体、どこから這い出して(失礼)きたのか?昼間は隠れて住んでいるんではなかろうか?今でも不思議でならない。アメリカにはハイソサエテイーと呼ばれる、「その人達」だけの特別な社会があるが、まさか、ハワイで垣間見るとは思ってもいなかった。そんな訳で毎回、大小のパーテイーへ誘いを受けて楽しい時間を過ごしている。そんなパーテイー、今年は2月1日だった。中国の旧正月を祝うパーテイーが「CS&WO」主催で行われた。

Mr&Mrs.michael Cynthia Wo


 会場は彼のお店。これまでもこ招待を受けたが、その日は今まで以上に盛大に開催された。この不況の時代、彼ら一族にとっては関係ないのだろうか?と、「下種の勘繰り」をしてしまった。出席者も著名人が多かった。(特に目を引いたのは日本からのエンタテナー、チェリッシュ!冗談・冗談!) 前州知事のカエタノ氏、アリヨシ氏、日本でも有名なダニー・カレキニ氏、ハワイ在住のアーテストなど見覚えのある顔が揃っていた。そんな雰囲気の中で、SONY創設者の一人の故盛田会長夫人とお話させて頂くチャンスがあった。英語も堪能で社交的な感じが伺われるミセスであった。夫人を紹介してくれたのはマイケルだった。日本人同士をアメリカ人が紹介するとは…何か妙な話だが、いずれにせよ、今回も350名程のアメリカ風の素敵なパーテイーだった。

Mrs.Morita&Mrs.Sakai (Sony Hawaii)


 やはり、僕のハワイ休暇は休暇とは言えないかもしれない。何かとスケジュールが入る。きっと、そんな僕の生活スタイルを嫌う人達もいるだろう。でも、僕は人と人との出会いで得る「何か」が大切で貴重な体験と考えている。人の「輪」と「和」も広がってもゆくと思う。

 「マイケル・ウォー」、彼はこれまで2度、日本へやって来た。初来日した時の日本までの航空券は、数年前に彼が誘ってくれた、タキシード着用のチャリテイーオークション・パーテイーで引き当てた航空券を利用しての来日だった。その時の一言がとても印象的だった。「チェリッシュのコンサートを観たかったからね!」、アメリカ人は洒落が上手いね!でもその一言がとても嬉しかった事を思い出した。I think of him as my best friend.

Waialae c.c. No.8