切り口

 

 10月後半、アルバムV&Eのレコーディングが終了した。VOL.3のVは「サンセット・ライダーズ」の金武功氏のアレンジ、VOL.4のEは、僕たちのコンサートでもお馴染みの加藤達雄氏と梶俊夫氏が担当してくれた。予想してた以上の広がりを感じる4枚の作品となった。

 アルバムを完成させるまでに、2年半くらいの準備期間を要したが、これまでのコンセプトが間違っていなかった事を再確認できた。アルバム「L・O・V・E」は、これまでの作品の中でも、最高傑作と自負している。


金竹功氏

 
加藤&梶氏

 今回のアルバムのスタッフは、GPにテイチク・エンタテーメントの野口氏、PDはパディフィールドの西澤氏、そして、エンジニアはハイブライトの湯沢氏だった。前回でもご紹介したが、皆さんベテランばかり、それぞれ豊富な経験と感性を備えていた。

制作スタッフ3氏

 

 長時間に渡るレーコーディング、休憩時間はお互いの音楽に対する思いが感じられるもの、興味深い話で盛り上がった。それは「五番街のマリーへ」に関しての事だった。歌詞の内容を覚えている方も多いと思うが、普通に考えれば、 主人公 の男性が昔の「恋人」への 思いを寄せた内容と考えるだろう。僕自身は、そう考えていた。でも、野口氏は違った「切り口」でとらえていた。

 「阿久さんだったら、「裏」があるのでは?」、と言う意見だった。じゃ〜、歌詞の中に出てくる「マリー」と「主人公」の関係は?と言う事になる。彼は一言、マリーは主人公の「娘」と、捉えていた。実に面白い考え方だと僕は驚いた。レコーディング中は勿論、OKテーク後も何度も聴き直してみた。 昔の恋人への思いとは違った愛の表現、 聴けば聴く程、マリーは娘!多分?絶対!娘に間違いないのでは?と言う結論になっていった。

 僕の性格上、恋人でも娘でも良いという訳にはいかない。が、今となってはそれを立証出来るすべはない。野口氏の発想は永遠の疑問として僕の心の中に残る事だろう。

 今回のレーディング中に阿久先生が亡くなられた。僕たちへも 「若草の髪かざり」他、多くの作品を頂いた。余談だが、PDの西澤氏は 阿久先生の 元マネージャー、これも、きっと「縁」なのだろう。心よりご冥福をお祈りしたい。

 3ヶ月に渡ったレコーディング、4枚のアルバムの曲数は52曲程になった。このプロジェクトからも良い経験をさせて頂いた。楽しかった事、苦しかった事、そして、悩んだりも・・・、まあ。色々だったが、チームで一つの目標に向かっていく過程、それが僕にとっての一番の宝だろう。又、同じスタッフで仕事が出来る事を願っている。

 訂正 
 当初、年内のリリースを予定だったが来年1月に変更となった。

 

スタジオにて